芦原すなお

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起伏の無いストーリーを香川の方言と田舎の朴訥さで上手いことイイ雰囲気に仕立て上げているけれど、話自体は大したものではない。バンド解散の危機や学校への反抗などロック定番イベントも特になし。甘酸っぱい恋愛エピソードはというとクラスメイトと海に行って貝を掘ったくらい。文化祭でライブをやって盛り上がってワァァー!!、その思い出を胸にボクたちは大人になってゆきます、的な話。
私の高校時代と大して変わらない、平坦で穏やかな高校時代。…のはずが何だろうこの違いは。やはりギターなのか、バンドなのか。漫研と生物部じゃ味わえない何かが軽音部にはあったというのか。

この流れ、どこか覚えがあると思ったら数年前も堀田あけみ『転がる石になれ』を読んで高校生バンドの青春をさんざん僻んだ後に波多野鷹『生物部物語』を読んでホッと溜め息を吐いていた。まったく成長していない……。


香川の田舎高校という閉じきった狭い世界の中でささやかな青春を謳歌していた主人公は最後、バンドの仲間と別れて東京の大学を受験する。ここでの東京行きは当然のように閉じた世界から脱却することのメタファーとしての意味を持っているわけで、1967年当時の観音寺は私の想像よりもはるかに田舎であろうことを考えるとこれはもう決定的な「ここから大人」イベントなのだろうけれど、この感覚は私のような「東京コンプレックスが無いコンプレックス」を持つ首都圏周辺人、横浜あたりで遊んで中心から少し外れたところで満足している人間にはいまいち共有できないもので、本質のところでこの小説の世界に入り込めていない気がして少し悔しい。それでもバンドに賭けた青春なんてまったく経験していない私がこれほど懐かしい気持ちになれるのだから、くたびれたサラリーマンが文化祭でワァァー!!出来るのだから、小説ってやっぱりすごいなあ!と思う。

『グミ・チョコレート・パイン』『ロッキンホース・バレリーナ』『キラ☆キラ』『青春デンデケデケデケ』と続いてきたバンド青春モノもこれでひと段落。次は何を読もう。