漢方小説  中島たい子

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漢方小説 (集英社文庫 な 45-1) (集英社文庫 な 45-1)

ストレスで、いや、そう簡単に片付けられない色々な辛い出来事の積み重ねで心身のバランスを崩した三十路女の、色気があるようでないような日常がくたくたと続いて、最後ちょっと立ち直る話。文章は軽妙でさくさく読める。
世間に対してやたら辛口な主人公が良くも悪くも等身大、ステレオタイプの三十路女で、親近感は湧くのだけれど読んでいてあまり気分が良くない。主人公がいろいろ辛くなるたび、空気の読めない中年男やうつ病の友人などが絶妙なテンポで紹介される。私の周囲はこんなに最悪で、だから私は参っちゃったんだよ。友達も似たような感じで困ってるし――という感じで。

しかし、それにしても主人公。辛いのは分かるのだけれど、「訪ねた病院はどこもまともに診断してくれなくて、しかも新米医師で話にならないこともあった」り、「書いた脚本(主人公はシナリオライターなのだ)が期待を持たされた挙句に没になって、しかもその理由が業界の下らないしがらみだった」りと、エピソードごとに悪印象の描写が二重三重の構えでどうにもしつこい。いかに世間が自分に無理解であるか、という描写が過剰でなんだか不幸自慢みたいになっており、そんなに被害者ぶらなくても、と思ってしまう。
貶し方がしつこければ褒め方もまたしつこくて、
「空気の読めない男ども ⇔ 私の辛さを分かってくれる漢方の先生」
「対症療法ばかりで役に立たない西洋医学 ⇔ 私の不調を認めてくれる東洋医学」
「抗うつ剤に頼ってなんだかヤバそうな友人 ⇔ 体にやさしい漢方の薬で癒してる自分」
…といちいち極端な反対例を持ってくる論法にいかにもオバさん的なまわりくどさを感じてしまい、馴染めない。

感じのいい先生に「あなただけの病気です」なんて言われた瞬間、心の拠り所が見つかった気になって漢方信者一直線なのも、実際はどうだか知らないけれど、あまりに典型的な三十路女のイメージ通り。
同じように困っているお年頃の女性たちよ、心の平安を取り戻す自分なりの方法がきっとあるはず!だから大丈夫だよ!という話。
全体的にちょっと待った、と言いたくなるような思考回路だけど、何だかんだで最後はしっかり心の平安を取り戻す主人公はさすが。
しかし本当にこういう女性って多いのだろうか。主人公が必要以上にナイーブで文句の多い人なだけのような気がする。主人公がすごいのか女性全般がすごいのかは実際謎である。


…戸川純「玉姫様」を聴きながらこういう女性特有の心のようすを揶揄するようなことを書くのは、ちょっと悪意的で良くない気がする。
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